うらそえ市民公開講座講演要旨

「地域ケアネットワークについて」
石原正常(浦添市福祉保健部地域支援課地域支援係長)−当時−

石原正常

みなさん改めましてこんにちは。私は浦添市の地域支援課というところにいます、石原と言います。行政の話ですから、高齢者介護をとりまく状況と、それに伴って地域ケア態勢、地域でどんな支えが必要なんだというところの視点からお話を進めさせていただきます。

高齢者をとりまく状況ですけれども、介護保険がはじまった平成12年と比べて大きく変わってきています。まず、要介護者の状態像が変わってきております。介護保険当初は、身体的な機能低下による要介護状態の方々が多かったんですけれども、近年では、いわゆる認知症といわれる方々の要介護者が増えてきています。それと、世帯構造。これまでは同居世帯が多いのが普通でしたが、高度成長期以降、核家族化の進展っていうのがあります。その影響もありまして、仲間先生の方からもお話ありましたけども、単身世帯というのが、ここ浦添でも大分多くなってきております。それと、20年の4月から始まりました、医療制度改革。その中で病院のベッドを減らす、これを療養病床の再編制と言っていますが、このことが高齢者の、在宅で支える医療と介護の問題について、大きなテーマを投げかけていて、今日的課題としてクローズアップされてきています。

日本における高齢化の推移ですが、これから2015年、2020年に向けて高齢化は急激な上り坂に入っていきます。もう恐ろしいくらい高齢者が増えていくということです。その高齢化の進展と同じように認知症の高齢者も増えていきます。先ほど話のあった一人暮らし高齢者、これも同時に増えていきます。これも急激な伸びを示していきます。

じゃそれでは浦添市はどういう状況なのか、というのを取りまとめた表です。先ほど、日常生活自立度がⅡb以上からは薬の管理が出来ないという話がありましたけども、いわゆるⅡ以上の方々が浦添では、これはまだ一昨年の3月の数字なんですけど、認定者数2100名程度に対して、ランクⅡa以上が1320人、高齢者人口の率にして8.9%。この数字は、実は国が2015年に全国推計値を出しているんですけれども、その数字を既に超えています。つまり浦添市で要介護認定を受けている方々の中で、なにがしらの認知障害を持っている方々は既に全国平均を超えているということになります。

次に高齢者人口と一人暮らし高齢者の比率を見てみます。
浦添市は、高齢化率が実は低いんです。若い街といわれていますので、高齢化率は今13%台ですかね。全国では20%、30%です。その少ない高齢者の中で単身者というのが、平成15年に14%台だったものが、平成19年には20%台。おおよそ5世帯に1世帯の割合で、独りで住まれている高齢者がいらっしゃるということになります。

昨今騒がれている医療制度改革の背景なんですけれども、この医療制度改革の背景も、始まりは超高齢社会への伸展というのに起因しております。

皆さんすでにご承知だと思いますが、私どもの医療保険の費用と言うのは年々増加傾向にあります。平成7年には27兆円、17年には33兆円ですね。これが今後どうなっていくかというと、平成29年まで、高齢者が伸びていきますから、ずっと伸びると、最終的には54兆円まで伸びるだろうと言われています。毎年1兆円ずつ伸びる計算ですね。ここでちょっと注目してほしいのが、この医療費、何が原因で伸びているか、というところを見てみます。この黄色い枠が高齢者以外の費用です。この緑色の枠が、老人医療費に掛かっている費用です。平成29年には44%、子どもからお年寄りまでの方々の約半分が高齢者の費用に掛かっているということになります。

では医療費をどういうふうにして適正化していくかという国の表なんですけども、基本的にその原因としては老人医療費の増加というのが今の説明で分かりますけれど、大きく分けて入院と外来受診、この二点に分かれます。まず入院については、いわゆる病院で療養する方々が多いと言うこと、それと病院で長く入院されているというのに起因すると国は考えています。それと通院については、どうも高齢期65歳から糖尿病、高血圧症の患者とかその予備軍というのが通院加療してきていると、いわゆる生活習慣病です。それと同時にこの方々、外来受診を続けたあと、75歳以上になると、そのまま入院に転化されるという傾向が見られるようです。そういう状況を元に国が今回示してきているのが、医療機能の分化、いわゆる療養期には在宅療養というのを進めていこうじゃないか、それを介護保険のサービス、介護の提供体制と連携することによって、地域の中で高齢者を支える仕組みがつくれないか。それと同時に、もう一方の通院のところですね、外来受診のところ。そこはいわゆる生活習慣病というのが起因することが見えてきていますので、その対策として、メタボリック対策と一般的に言われているやつですね、この対策も同時に進めていかなければならないと言われています。

これは療養病床の入院患者の実態を平成17年に調べたものです。療養病床と言うのは、医療保険の適用のものと、介護保険適用の二種類があるんです。ちょっとややこしいですけども、どちらの保険でも使えるベッドがあると言うことです。こういう方々の調査をしたところ、実に両方、介護療養、医療療養の両方において、約50%近くの方々が医師の指示がほとんど要らないという事が見えてきました。つまり病院に入院する必要が本当にあるのかどうかというのが、国が疑問を持ったところですね。それが医療も介護も同じように見られるということで、どうも機能が、医療は医療、介護は介護という機能分化というのは上手く使われてないじゃないかということになります。

そういう背景の中、医療保険制度改正が行われましたが、主な政策としては、特定検診、あと特定保健指導、それと平均在院日数の短縮と言うことで、療養病床の再編成、転換。あと、在宅医療支援の強化、そして悪名高いですね、後期高齢者医療制度です。

では療養病床の再編成って一体どういうものなのかということですけれども、簡単に言うと、病院の療養ベッドを、医療ニーズの高い方だけに限定した分だけ残して、医療ニーズの低い方々の分は全て無くしていきましょうという方針です。これは平成24年の3月にはこういう形を国は作りたいと考えています。これちょっと古い資料なんで適切かどうか分かりませんが、およそ38万床あるんですね。医療保険適用の療養病床と介護保険適用の療養病床が。それを整理して医療ニーズの高い方々のために15万床残しましょう、残り23万床、仲間先生もおっしゃっていました、すごい数字なんですねこれ。これは老健とかケアハウス、あるいはご自宅のほうに移行していただきますよっていうのが国の全体の政策の形です。

これに対して新たな課題が出てきます。いわゆる医療ニーズが低いということで、社会的入院の問題というのは解消されるのですが、その受け皿、この人たちは、じゃどこに行くのかということです。先ほど言った老健施設であるとかケアハウス、どこにあるの、本当に準備されているのっていうところになります。こういうことが確保されていないと、なかなか病院から出られないですね。なぜかというと社会的入院っていうのは、ご自宅で、なんらかの理由でご自宅で生活できない、これが一人暮らしであったり、介護する家族がいないだったり、そういうニーズを持った方々が多くいらっしゃいます。在宅をされる基盤が整備されてない中で、言い方悪いですけれど「追い出される」ような格好が取られるっていうのは大きな問題となってきます。

沖縄県内の在宅医療の状況ですが、診療所数は、人口10万あたり56.3施設ということで、全国45位という状況です。それと今度のキーになりますが、在宅療養支援診療所数、これは18年に新設されたやつで、24時間体制を整えている診療所でございますが、これも75歳以上の1,000人あたりでは、0.46施設、これは全国35位です。それと訪問看護ステーション、これも全国38位。往診の実施数、これはもう人口当たり実は最下位ということで、これらを見る限りにおいては必ずしも十分にあるとは考えられませんが、先ほど言ったように浦添市内には9箇所の在宅療養支援診療所があるということなので、これは実は、国の示しているこの0.8の大よそ3倍、ですから浦添市はこの在宅療養支援診療所数は、まぁこれが多いか少ないか分かりませんが、今現在全国の平均のこの0.82、1,000人あたりの、施設数と比べると十分整備されているという状況にあります。

これは、療養病床の入院患者の状況を調べたものです。世帯状況ですが、入院患者のうち、高齢者世帯、単身世帯ですね、それと高齢者だけで生活されている世帯、これを見てみますと、全国も沖縄もおおよそ4割ぐらいの方々がそういう状況です。いわゆる「介護力がない」方々ですね。次に介護者の有無というところを見てみますと、日中夜間とも介護できる人がいないというところが、全国56%に対し、沖縄県67%、約7割弱。先ほど4割でしたよね、高齢者と高齢者のみが、じゃ残り30%は何なのということで、これは共稼ぎであるとか、家族と一緒に住んでいるんだけども、なかなか介護できる力がない、そういう技術がないだとか、そういうことが含まれてきます。所得の状況ですが、4割の方々がそれほど多くない収入、非課税世帯の段階なんですけれども、の中で生活をされているという状況が見受けられます

明らかに国は施設から在宅へと転換してきてます。これからの高齢者の医療介護サービスは施設で行ってきた医療中心モデルから、在宅でやる介護中心モデルに転換されることがもう分かっています。ですから今現在入院されている方も、24年までの間に、いくらかの人たちは退院を余儀なくされ、どうしてもおうちで生活してくれというところで悩みを抱えることがもう見えてきています。ただし、こういった方々が先ほど、低所得者が多い、介護者が少ないという今の療養病床に入院されている方の現状を見ると、残念なことですけども、介護保険だけではこの方々をサポートすることは極めて困難だと言えます。こういう方々をサポートするには、在宅療養を行う医療サービス、それと家族の支え、それと一人暮らしとか介護度の重度化に対する対応として住まいの整備というのを進めていかなければなりません。ただ実際には医療資源は不足しておりますし、介護力は低下している、それと施設サービスというのは今縮小傾向ですね、ベッド減らされるわけですから、という状況があります。

私たちは高齢者の安心支援ということで、いろんな取り組みをしておりますけれども、高齢者の安心を確保するために必要なものとして、こういう新しい住まいの問題であるとか、介護力の低下を補うような地域住民の助けである地域力、それと今回のテーマであるこの在宅での医療のサービスの提供っていうところが必要なものになってくると考えております。

新たな住まいの問題ですけれども、団塊の世代の方々は、どうも多様なライフスタイルを持ってらっしゃって、従来の、病院よりも自分の住み慣れたところで住みたいという気持ちを持っている傾向が、もうすでに各種アンケートで確認されております。こういう新しい住まいのものをつくる時に、実は居住系サービスといって、施設サービス、従来の施設サービス、介護保険には特養、老健という施設があるんですけども、それ以外のサービスですね。それと在宅の間を埋めるようなサービスが必要なんです。この居住系サービス、有料老人ホームとかケアハウスと書いていますけど、どういうサービスかというと、施設的サービスを行うところです。これは施設ではないんですけども、施設的なサービス、24時間365日やっています。地域密着型サービスというのが18年に創設されましたが、従来の一般的なサービスは都道府県の指定になっていますけれども、地域密着型サービスは市町村の権限でこれを整備していくことが可能となっております。そういった意味では市町村の実情に合わせて、その整備の規模というのを決めていけますので、居住系サービスの整備を図る上では有効的な手段の一つだと考えられます。

現在浦添にはグループホームが5ヶ所、小規模有料老人ホームが1ヶ所あります。今後、高齢者を地域で支える基盤として整備計画を策定しますが、この計画は今現在策定中の介護保険事業計画の中で決めていきます。浦添では、いわゆる中学校校区を整備計画区域として、その実情に合わせて、必要な量とか、サービスの内容とかを決めていく予定になっています。

つづいて地域力です。基本的に、介護サービス、医療サービスで在宅を支えていくということがあるんですけども、どうしても介護力が極めて落ちている、たとえば高齢者が高齢者を支えているような老老介護であるとか、場合によっては認知症の方が認知症を支えるような認認介護、最近これ増えているんですけれども、そういった場合、地域住民によるちょっとした支え、見守り活動とか声掛け活動とかありますけども、こうしたちょっとした支えでもって、この介護力を補完することが出来ることもあります。

浦添市では認知症対策として、認知症を地域の方に知ってもらおうと、知ってもらった上で、その地域の中で認知症の方々をケアする仕組みを地域住民に作ってもらおうということで、今さまざまな取り組みをしております。

今「物忘れ講演会&相談会」と題して、地域の中でいろんなことを認知症に対してやってます。その講演会も、専門のドクターと、認知症介護のプロのみなさんの協力を得ながら、行政と協同で進めています。こちらに今松本さんがいますけど、ちょっとこれ悪いのでね、写りが、実物は本人見てください。

で、もう一本、認知症とは別に、一人暮らし対応ということで、一人暮らしだけではないんですけれども、ご自身で避難が難しい人たち、こういう人たちに対応していかなければいけないということで、実は浦添市は災害時の要援護者支援計画というのを昨年策定しまして、その中で地域の要援護者のみなさんを地域住民が日ごろから見守る活動をしようと、併せて、災害時に何かあったら、そういう災害時にも対応できるような体制を組もうじゃないかということで今、各地域でその取り組みが始まっているところでございます。
最後になりますけど在宅医療なんですが、在宅医療については仲間先生から綺麗な説明がございましたので、割愛させていただきたいと思います、時間の都合上。ただ一点だけ、ちょっと在宅介護の現場から見えてきたところを少し紹介させていただきます。 これは、在宅介護と在宅療養の現状ということで、介護支援専門員、いわゆるケアマネージャーさんが思っていることのアンケートをとったものです。絶対数が少ないんですけども。まず、在宅療養で調整・支援をスムーズに行うことが出来なかったと思うことを聞いたところ、家族との調整、医療との調整が困難だということ、2番目に医療との調整を挙げています。

これからの在宅療養が充実してほしいと思う重要な項目というところで、在宅医療、往診の充実、あと緊急時の対応の充実。つまり現在は少し充実とまではいってないというところですね。これが要望、大きな要望として取り上げられています。

今回、浦添市の医師会が在宅医療ネットワークを立ち上げられました。今月の話ですけれども。この立ち上げによって、いわゆる訪問診療等の医療サービスの充実が期待できます。当然在宅療養の推進も期待できますから、これまで、何かあると施設に入らないといけないかなと心配されていた方も、在宅での生活の可能性が広がることになります。ご自宅で医療が受けられれば、なんとか介護していけるとか、家族が安心できる環境が出来ていくわけです。

これも割愛させていただきますけど、先ほど言った浦添市によるチームアプローチですね。ホームドクターを中心に、いろんな先生方、専門の先生方が関わって、ケアマネージャーさんとかPTやOT、あと訪問看護ステーションのみなさんと連携しながら介護サービスと、医療サービスの提供。何かあって、急性増悪などの場合には、すぐ入院される後方支援、ここはすごいんですね。浦添市はこちら、5ヶ所の病院が入ってきますから、ここと診療所の先生方が連携するというところが浦添市のネットワークのすごいところだと思います。

こうした、いわゆる新しい住まいの問題と地域力、あと在宅医療っていうのが介護保険と組み合わされて提供されることで、在宅でも24時間365日の安心というのが確保できるのではないかと考えています。そうすることによって在宅でも、高齢者になっても、障害をもっても、自分が好きな自分のおうち、もしくは地域で、ずっと暮らし続けていきたいという希望が叶えられるのではないかと思っています。こういう仕組みを医師会の協力の下、進めていけるわけですから、これからの各関係者の活動は期待できるものだと考えておりますので、期待を持って是非見守っていただきたいと思います。

すみません、あと1分ほどお願いします。今までが現状なんですけども、私、介護予防の担当なので、ここまで紹介させてください。ネットワークは関係者と協同でしっかり作っていきますが、いずれにしても、できれば病気にならない、介護にならないというのは皆さんが持っている想いだと思います。

主に、介護が必要となった主な原因というのをちょっと見たところ、若いとき、65歳から74歳と、若いときには脳卒中、先ほど言いましたね糖尿病とかいろいろな事言いましたが、脳卒中など、いわゆるメタボ対策をやらなくて倒れるという原因があります。それと後期高齢、75歳以上になると、逆転現象が起こります。転倒と骨折、いわゆる筋力の低下で転んで骨を折っちゃったとか、そういうのが要因で要介護になっている状況があります。

そういったものを防ぐために、是非、浦添市でやっている特定検診を受けて、メタボ対策をしっかりとやってください。それと介護予防のために、適度な運動というのを進めていただきたいと思います。そうすることで介護予防が推進されます。で、きっと健やかで幸せな人生というのが皆さんを待っているのではないかと思っています。

行政も一生懸命がんばります。みなさんも是非一生懸命自らの健康に留意していただきたいと思います。一緒になってみんなが笑って過ごせる浦添市というのを是非つくっていきましょう。どうもご静聴ありがとうございます。